ダブルデイでは『毎日使うものだからこそ、丈夫で長持ちするものを使っていただきたい』という想いで、日本はもちろん世界中の作り手がていねいに作りこんだ“手仕事”のアイテムを多く取り揃えています。~手仕事Travel~では、そんな作り手の矜持が感じられるアイテムや製造過程、背景などをご紹介していきます。
第7回は、30年ほど前に日本に初めて紹介されて以来、変わらぬ人気がある「少数民族が織る織物“キリム”や“トライバルラグ”」をご紹介します。
キリムやトライバルラグって何?
キリムもトライバルラグも、中央アジアに点在する遊牧民や少数民族が織る織物のことです。国や部族の違い、織り方の違いで名称を分けています。
キリムは毛足がない薄い織物
キリムは主に、トルコやイランといった国々の遊牧民が作っている織物です。パイル(毛足)がない平織の敷物のことで、西アジアから中央アジア一帯の広大な地域を移動しながら生活する遊牧民の生活用具として作られました。よく耳にされることがある「ギャッベ」も同じ遊牧民の織物ですが、こちらは毛足があるタイプです。
家畜とともに長距離を移動する彼らにとって、折りたたんで持ち運びができるキリムは生活必需品です。敷物としてだけでなく、テントや衣類など、様々な形に変えて大事に使用されてきました。生活必需品であると同時に、生活に彩を添える装飾品でもあり、伝統的な工芸品でもありました。
嫁入り道具として大切に作られてきた
キリムを織るのは主に女性の仕事でした。少女の頃に母親や祖母から習い始め、嫁入り道具として自ら織ったキリムを持参するものでした。キリムの質や量はその家の地位や身分を示すと言われ、家の伝統として大切に受け継がれてきました。
身近にある自然がモチーフ
キリムの特徴として、意匠と色使いが挙げられます。
意匠のモチーフには、彼らの身近にある自然や動物が取り入れられていることが多く、部族ごとに女性たちが代々受け継いできた文様が祈りや願いとともに表現されています。
(文様の一例)
資料提供 サミット有限会社
色鮮やかな糸は、羊毛を染めて作っています。キリムの糸の染料には、身近にある草木が多く使われています。日本でも馴染み深い藍染めは、現地でも虫がつきにくいと重宝されています。染料には、コチニール(赤系)・なすの皮(青系)・くるみの皮(茶系)など様々なものが使われています。
▼染められた羊毛
デザインには織り手の個性やセンスが盛り込まれています。基本的に一点ものです。長い日数をかけて少しずつ織るので、織っているうちにゆがみなどが出てきます。このようなおおらかさも手織りならではの魅力です。
ニューキリムとオールドキリムの違い
◎ニューキリムは、近年織られたものを指します。現代の生活にマッチするサイズのもの、輸出先の国(欧米、日本など)に受け入れてもらいやすい色使いなどにアレンジされており、古いものにはない鮮やかな色のものなどもあります。オールドキリムと比べると安価なのも特徴です。
▼色鮮やかなニューキリム
◎オールドキリムはおおよそ40年以上前に作られ、人々の生活の中で使われてきたものを指します。最も古いもので100年ほどです。家庭用に作られ、厳しい自然環境の下、テント内で使用されるなどしてきたものです。中には破損しているものもあり、その場合は同じような糸を使って修復します。
オールドキリムの中でもコンディションが良いものを特別に「レアオールドキリム」と呼ぶこともあります。
オールドキリムは洗浄や修復をし、時にはクッションカバーなどに加工して販売しています。
▼オールドキリムを加工する様子
▼オールドキリムを加工したクッションカバー
トライバルラグも遊牧民の織物
トライバルラグは、パイル織の素朴な織物です。イスラム圏の遊牧民が織る織物で、毛足があるタイプを総称してトライバルラグ(部族のじゅうたん)と呼んでいます。日本ではあまり注目されてきませんでしたが、欧米では早くから愛用されてきました。
キリムと同じく、暮らしの中で使われ、部族ごとのモチーフや色使いが取り入れられています。キリムとの違いは、何と言っても感嘆させられるほど緻密に表現されたデザインです。
▼緻密に織り上げられたモチーフ
いつまでも見ていたくなるほど緻密に表現されたモチーフは、完成までにかけられた時間が膨大であることを容易に想像させます。
遊牧民の中でも過酷な環境下に生きる人々も多く、暮らしの道具として受け継がれてきたトライバルラグには長く使い続けられてきた証として、ほつれや補修の跡があります。
使い込まれた古い織物には、1枚1枚異なる表情があり、その抜け感が現代の私たちの「暮らしにも彩りを添えてくれています。
▼遊牧民のテント内の様子
◎キリムクッションのアイテムはこちらからご覧いただけます。